
今から約3年半前、私たちは当時1歳半だった娘を連れて、ドイツから日本へ引っ越してきました。
初めての子育てだけでも、毎日が新しいことの連続。そこに新しい国、言葉、食べ物、医療の仕組みが加わり、慣れるまでにはずいぶん時間がかかりました。正直なところ、今でもまだ、その途中にいるように感じることがあります。
それでも、私たちは日本での暮らしが大好きです。東京のすてきな街に住まいを見つけ、まだ習慣や日々のやりとりに戸惑っていた頃から、ご近所の方々が温かく迎えてくれました。今では、ちょっと買い物に出るだけでも、顔なじみの誰かに会って挨拶をしたり、少しおしゃべりをしたり。
そんな小さな出会いの積み重ねが、「ここが私たちの居場所なんだ」と感じさせてくれます。

少し恋しくなったもの
夫も私もドイツで育ち、親としての最初の一歩もドイツで踏み出しました。日本でたくさんの新しいことに出会う一方で、慣れ親しんだものが恋しくなることもあり、疑問もいろいろと湧いてきました。
東京で息子が生まれると、そんな疑問はますます身近なものに。こちらでは、生まれたばかりの赤ちゃんにどんな服を着せるのだろう? ベビーカーに敷く、ふかふかのウールのライナーはどこで見つかるのだろう? そして、私はつい靴下をもう一足、と手を伸ばしてしまうのに、どうしてこちらの赤ちゃんたちは素足でこんなに気持ちよさそうなのだろう?

違う文化の中で子育てをしていると、それまで当たり前だと思っていたことに気づかされます。ある場所では自然なことが、別の場所ではまったく違う。日本の公園で、子どもにゆったりと向き合う親御さんの姿に感心することも多く、自分の接し方を振り返るきっかけにもなっています。
学ぶことも、楽しい発見もたくさん。それでも、恋しくなるものはありました。
もちろん、いちばんは子どもたちのおじいちゃん、おばあちゃん。さすがにスーツケースには入れられません。
そして、もっと小さなものも。ヨーロッパのお店でよく見かけていたような木のおもちゃ。冬に着せたくなる、ドイツの「Wollwalk(ヴォルヴァルク)」という、ウールを縮絨させた生地の暖かな服。ベビーカーにそっと敷く、柔らかなウールのライナー。
子どもたちはアンパンマンが大好きです。その楽しさと、私たちが育ってきた日々になじみのある素材や色、ものたち。どちらも、私たち家族の暮らしの中にあっていいのだと思います。

「いつか、私たちの小さなKaufhausに並べよう」
どちらかが「これが日本でも見つかったらいいのに」と言うと、もう一人が冗談で返すようになりました。「じゃあ、いつか東京に開く私たちの小さなKaufhausに並べようよ」。
Kaufhausは、ドイツ語で「百貨店」という意味。その頃の私たちのお店は、まだ想像の中にしかありませんでした。
でも、その冗談は何度も登場しました。夕食の席で、子どもたちの話をしながら、あるいは「これも日本で紹介できたら」と思うものに出会うたびに。
いつしか、想像の中のお店には名前がついていました。Kaufhaus Koboldです。
Koboldは、いたずら好きな小さな妖精のこと。私たちが子どもの頃に親しんだ「Pumuckl(プムックル)」から着想を得ました。

夕食の席の冗談が、本当のお店になるまで
3人目の子どもを妊娠していた頃、それまでの仕事には戻らないことを決めました。出張が多く、家族と離れて過ごす時間が長くなる働き方を、もう続けたいとは思えなかったからです。
それでも、自分自身の何かを始めたいという気持ちはありました。
いちばん下の子が保育園に通い始めると、ずっと心に残っていたあの小さなアイデアに、ようやく向き合う時間ができました。冗談だったものが、お店の構想へ。そこから数か月、調べて、選んで、学んで、少しずつ形にしていきました。
それまで、事業を始めた経験はありませんでした。ひとつずつ手探りで学びながら、Kaufhaus Koboldをゼロからつくってきました。ここまでの道のりにはいろいろなことがあり、今も学ぶことばかりです。

「これが日本でも見つかったらいいのに」と思っていたものを、今こうして日本で暮らすご家族にご紹介できる。そのことを、とてもうれしく、誇らしく思っています。
このStoriesでは、お店に並ぶものを選んだ理由や、つくり手のこと、遊びについて考えたことをお届けしていきたいと思っています。ときにはお店の棚を離れて、家族の日々の中で見つけたことも。
この始まりに立ち会ってくださって、ありがとうございます。

Janina(ジァニナ)